住宅用火災報知器は、住宅の火災をいち早く感知して、火災の発生を周囲に知らせて避難を促す装置です。
今ではすべての住宅に設置が義務付けられています。(消防法第9条の2)
住宅用火災報知器について、設置が義務化された背景、住宅内の設置方法を解説します。
住宅用火災報知器の設置が義務付けられた背景
「2005年版消防白書」によると建物火災で亡くなった1159人のうち、約62%が逃げ遅れたことによって亡くなっていて、かつ、逃げ遅れが発生した事例の多くは22時から6時の間に起きているとのことです。
夜間に火災が発生することによる逃げ遅れが多く、それを防ぐ体制を作る事が国として防災上の課題となっています。
2011年6月1日以降は全ての住宅において住宅用火災報知器の設置が義務付けられることとなり、火災が発生したときに国民が火災に気付いて避難をしやすい体制を作る事が推し進められました。
令和3年においては建物火災による死者数は全国で966人と減少傾向であるため、住宅用火災報知器の設置義務化は有効であったと推定できます。
夜間の煙草やストーブ、コンロの消し忘れ、電気機器のトラブルは起こりうる身近な火災の原因です。
住宅用火災報知器の設置場所
住宅用火災報知器は住宅内のどこに設置をする事が必要でしょうか?
消防法において、住宅用火災報知器の設置場所については「政令で定める基準」に従い市町村条例で定めることとされています。
「政令で定める基準」として消防法施工令第5条の7では住宅用火災報知器を設置場所について条例制定の基準が定められており、これによると基本的には「寝室」及び「(寝室がある階の)階段上部」に設けることとされています。(この2箇所については全国的に法律レベルで設置が義務付けられているわけですね。)
「寝室」や「(寝室がある階の)階段上部」に設けることとされています。理由は先程少し述べたとおり、「就寝時間帯の逃げ遅れが火災による死亡原因として多いから」です。
ただし、住宅用火災報知器の設置義務については各市町村ごとに条例で定めることとされているため、設置義務居住している市町村によっては「寝室」及び「(寝室がある階の)階段上部」以外の場所についても条例で住宅用火災報知器の設置義務が課せられている場合があります。管轄の消防本部・消防署へ確認してください。
火災報知器の種類
代表的な住宅用火災報知器の種類は、
【煙式(光電式)】
寝室・階段室・台所などに設置する。
煙が住宅用火災報知器に入ると音や音声で火災の発生を知らせます。
※消防法令で寝室や階段室に設置が義務付けられているのは煙を感知する(煙式)住宅用火災報知器です。
【熱式(定温式)】
台所・車庫などに設置する。
住宅用火災報知器の周辺温度が一定の温度に達すると音や音声で火災の発生を知らせます。
※台所や車庫などで、大量の煙や湯気が対流する場所等に適しています。
住宅用火災感知器には電池式ワイヤレス連動型と電池式単独型がある
住宅用火災感知器には、2種類の方法があります。
電池式ワイヤレス連動型
電池式ワイヤレス火災感知器は「親機」1台と「子機」数台のセットになります。
例えば、4LDKの住宅で、リビングで火災があり、リビングの火災報知器が鳴った場合、他の部屋に聞こえませんが、電池式ワイヤレス連動型なら別の部屋に設置している火災報知器が「リビングで火災です!」と鳴るので他の部屋にいる人も火災に気付き、早期避難が可能です。
また、部屋名を言いますので、火災の部屋を避けて避難ができます。
更に火災感知器に明かり付きタイプがあり、夜間に火災が発生しても明かりが点灯し、避難がよりしやすくなります。
電池式単独式
電池式単独式は、火災が発生した部屋のみ火災報知器が鳴ります。他の部屋は鳴りません。
こちらも明かり付きがあるので、夜間に火災が発生しても明かりが点灯し、避難しやすくなります。
ワンルームなどにおすすめです。
住宅用火災報知器の取付方法
住宅用火災報知器は「壁」または「天井」に取付ける必要があるのですが、住宅用火災報知器を天井に取り付ける場合は、壁と住宅用火災報知器の中心が60cm以上(熱式の場合は40cm以上)、また、住宅用火災報知器の付近に「梁(はり)」がある場合も壁と同様に、梁から火災報知器の中心を60cm以上(熱式の場合は40cm以上)離して設置してください。
住宅用火災報知器を壁に設置する場合は天井と住宅用火災報知器の距離が15cm以上50cm以内となるように設置をします。(部屋の角は煙が滞留しにくく、有効に火災を感知できなくなるからです。)
また、天井や壁からの距離とともに換気扇やエアコンとの距離を考えることも大切です。換気扇やエアコンと住宅用火報知器の中心が1.5m以上離れるように設置をします。(換気扇やエアコンの風の影響で煙を有効に感知できなくなるからです。)
実際の取付け作業を行う際は高所での作業となるため、まずは足場を確実に確保した上で作業を行います。
取付けは非常に簡単です。
取付ベースをドライバーや電動ドライバー等を用いてネジで固定し、固定した取付ベースに本体をはめ、右に回し「カチッ」と音がなったら作業完了です。
更新年月がわかるように、本体側面に取付け年月を油性ペンで記入します。
取付けたら動作確認を行います。
警報停止ボタンを約1秒間押します。作動灯(赤)が3回点滅すると同時に、「ピッ、正常です。」と1回鳴 れば正常です。
住宅用火災報知器は6ヶ月に1回定期点検が必要です。
【点検方法】
①検知部のホコリや汚れを確認する。
火災報知器を取り外し、水または石鹸水を雑巾等に浸し、絞ってからホコリや汚れをとってください。
②動作を確認する
警報停止ボタンを約1秒間押し、正常に動作するか確認します。
住宅用火災報知器の寿命は?
住宅用火災報知器の寿命は約10年です。
古くなると電子部品の寿命や、電池切れなどで、火災を感知しなくなる可能性が出てきますので、約10年ごとに更新を推奨しています。
(電池式にはリチウムイオン電池が内蔵しています。電池寿命も約10年になります。)
パナソニックの住宅用火災報知器は交換時期が近づくと作動灯が4回点滅(5分ごと繰り返し)し交換時期を教えてくれます。
まとめ
住宅用火災報知設備の設置が義務化された理由は夜間の逃げ遅れによる火災が多く、それに対する対策が国として急務だったからで、住宅用火災報知設備の設置場所は基本的には、寝室と寝室がある階の階段上部です。
取付け位置は、住宅用火災警報器の中心と壁から60cm以上、天井から15cm以上50cm以内の範囲に設置し、換気扇やエアコンから1.5m以上離して設置します。
暮らしの安全を守る大事な機能を持った装置なので、「住宅用火災警報器、まだ取り付けてないよ」という方がおられましたら、この機会にぜひ設置をおすすめします。