絶縁抵抗測定のやり方です。
絶縁抵抗計(通称メガ)を用いて配線、機器の絶縁を測定する方法です。
絶縁抵抗測定の目的
電気設備が安全に運転されるためには、保安上または電路の保護上、
接地工事を施しているところを除き、すべて大地から絶縁するのを原則とします。
要は配線や機器の絶縁を測定し絶縁状態を判別する必要があります。
絶縁抵抗測定の手順
まずは絶縁抵抗測定を用意します。
機種は何でも良いですが、低圧回路を測定するならレンジが50V~500Vメガ
高圧回路を測定するなら1000Vレンジがあるものを用意します。
①まずはゼロ(零)チェックを行う。
絶縁抵抗計のL(線路)端子とE(接地)端子
を短絡し、スイッチを入れ指針がゼロになることを確認する。
要は機器が正常に動くかを確かめます。
↓
②測定する電路が活線でないかをテスターを使用して確認する。
↓
③レンジを測定する電路の電圧に合わせます。
↓
④接地側(E)の黒色リードを接地(接地銅バーなど)に接続します。
↓
⑤赤色(L)のリードを被測定物に接続します。
↓
⑥測定ボタンを押し、表示が安定するまで少し待ち、安定した数値を読みます。
大地間と線間の測定
絶縁抵抗測定には、大地間と線間測定があります。
大地間は、充電部と接地間で測定し、漏電や絶縁劣化を測定するために行います。
測定する際は照明回路であればスイッチはON、コンセント回路は負荷が差してある
状態で測定できます。
線間は充電部と充電部を測定し、電路が短絡していないかを測定するために行います。
測定する際は、照明回路であれば、スイッチをOFFにして、コンセント回路であれば
コンセントに差してある負荷を外してから行います。
線間はキュービクルから各盤に敷設している幹線ケーブルを測定するのが一般的です。
盤の二次側の回路はあまり測定しません。万が一、回路に機器が接続した場合
故障するかもしれないので注意してください。
特に空調機などの基板が入っている機器は、線間で絶縁抵抗測定を故障する
恐れがあります。
絶縁抵抗値の良否判定基準
絶縁抵抗値は、測定時の天候、気温、湿度、汚れなどに大きく影響します。
よって使用の状況、気象条件その他を考慮に入れて、その適否を判定する必要があります。
測定対策 | 測定箇所 | 絶縁抵抗値 | 測定器の種類 |
---|---|---|---|
高圧の機械器具および 屋内配線(内線規程3802) |
― | 3MΩ | 1000Vメガ |
低圧電路の引込口、屋内幹線 および分岐回路の開閉器または 自動しゃ断器で区分する電路ごと (技術基準第58条) |
300V以下の対地電圧150V以下 | 0.1MΩ以上 | 125V 250V 500Vメガ |
300V以下の対地電圧150V超過 | 0.2MΩ以上 | ||
300Vを超えるもの | 0.4MΩ以上 |
上表の左欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ、
それぞれ漏洩電流を1mA以下に保つこと。
基準はありますが、新築工事ではレンジの最大値で試験結果測定表
を提出するのがあたりまえになっています。
たとえば500Vで測定した場合は100MΩです。
絶縁が悪い原因
新築工事の場合に絶縁抵抗測定を行い、基準値以下の原因としては
結線間違いや、ケーブルにくぎやビスが刺さっている。
また、スイッチやコンセントを取付けるときに使用するボディービスが
ケーブルにくい込んでいるなどが考えられます。
既存建物の場合は、機器の劣化が考えられます。
空調機などの基板が入っている機器は大地間でも絶縁が悪いと
まではいきませんが、良い値が出ない場合があります。
太陽光パネルの絶縁抵抗測定
なぜ太陽光発電パネル用の絶縁抵抗計が必要なのかというと、
太陽光パネルは日中、常時発電しているため、絶縁抵抗測定を
行うと正確に測定できません。
発電中に正確に測定するには、測定回路を短絡する必要があります。
短絡開閉器を別途設置する必要があり、アーク発生の危険性もあります。
また、危険を回避するために夜間の測定が推奨されているという、
非常にめんどうなことになります。
太陽光発電システム用絶縁抵抗測定器なら、
太陽光専用測定レンジ「PVΩ」がありますので、
そこに合わせれば、すぐに測定することができます。
【絶縁抵抗計 日置電機製 IR4053】
太陽光パネルの絶縁測定方法
①接続箱の出力用開閉器を開放します。
↓
②太陽光パネルの断路器を開放します。
↓
③測定経路にサージアブソーバーがある場合は切り離します。
↓
④絶縁抵抗計のロータリースイッチを「PVΩ」に合わせます。
↓
⑤試験電圧を500Vか1000Vにします。
↓
⑥黒色のテストリードを接地端子に接続します。
↓
⑦赤色のテストリードをP、N端子に当てます。
↓
⑧測定ボタンを押し測定します。(4秒で表示されます)
↓
⑨サージアブソーバーを切り離した場合は戻します。
↓
⑩ 太陽光パネルの断路器を投入します。
↓
⑪ 接続箱の出力用開閉器を投入します。
以上で完了です。
絶縁抵抗測定表の作成
試験を行った結果を試験成績表として提出します。
測定表は分電盤、動力盤ごとに作成します。回路が多い場合は
数枚に分けて作成します。
回路名称、回路番号、測定値(各相)、測定日、天気、気温、湿度
を記入します。
また、絶縁抵抗計は校正を受けたものを使用してください。
校正を受けていない計器は正しく動作しない可能性があります。
校正証の写しも添付すればより信頼できる試験成績表になります。
デジタルとアナログどちらが良いか
絶縁抵抗計にはデジタルとアナログがあります。
昔ながらのアナログタイプはわかりやすい点がありますね。
新築現場の場合、500Vで測定したならほとんど100MΩとなりますので
針が∞を指せば100MΩ以上となり判断しやすいです。
デジタルは測定値が安定するまでに時間がかかるイメージがありますが、
最近の絶縁抵抗測定計は高速表示と無線記録でパパッと検査完了が
可能な絶縁抵抗測定器があります。
測定値表示が速く、リードを当てるとすぐに判定するため、
パッパッと導通チェックのように一瞬で測定値が出て、
次々と測定が出来ます。時間の短縮に最高です。
おすすめ絶縁抵抗計
建設現場は高齢化と人口減少のあおりをもろに受けています。
建設現場は3Kと呼ばれ、「きつい」「きたない」「きけん」で
若い人材が敬遠する業界となっています。
職人も土曜日は通常作業していますし、現場監督も土曜日は
仕事をしています。かつ工期が迫ってくると、残業もあたりまえで、
日曜日も仕事になりますので、なおさら働きたくないと考えるでしょう。
さらに建設現場はIT化が遅れていて、人による作業に頼ることが多いです。
最近ようやくタブレットを持ち現場管理を行う人がいますが、まだまだ
普及は遅れています。
タブレットやスマホを効率良く活用する方法を模索しているのが現状です。
絶縁抵抗測定計にも新しい技術を導入した機種が出てきています。
中でも日置電機の IR4055は、測定値をホールドした
データをBluetooth(R)無線技術で
スマートフォンやタブレットにすぐに転送することができます。
ホールドするだけでデータが記録できるので、
手書き記録やパソコンへの転記作業が不要です。
これを使えばめんどうな絶縁抵抗測定表の作成がらくにできます。
働き方改革で有給休暇を年間5日間取得が義務化されます。
建設業は5年の猶予期間(2024年4月~)が設けられていますが、いずれ
長時間労働は解決しなければならない問題です。
高性能な試験機材や工具などを使用し、省力化を図っていきたいですね。